わんちゃんによく見られる皮膚疾患のひとつで細菌感染による皮膚炎のことです。
一般的にはブドウ球菌(Staphylococcus Pseudintermedius)が原因で発生します。正常な皮膚にもブドウ球菌は存在しますが悪さはしていません。アレルギーなどで皮膚を傷つけることで皮膚バリアに異常が生じることで細菌が増殖し膿皮症が発生します。
猫ちゃんでは咬傷による膿瘍を除くと稀です。
痒みや皮膚の赤み、かさぶたやフケを認めます。そのほかにも膿疱(ニキビ)、表皮小環(円形に発生するフケ)を認めます。
基礎疾患が原因となり、皮膚のバリアが機能しなくなると細菌が増殖し膿皮症が発症します。
膿疱や表皮小環といった皮膚症状と皮膚検査により炎症細胞が球菌を食べている像を認めることで診断します。
また同時に別の皮膚疾患(マラセチア性皮膚炎や皮膚糸状菌症など)が併発していないかも確認します。
治療は主に抗菌薬の全身投与、抗菌薬・消毒薬の外用、基礎疾患の検索と治療の3つに分けられます。
細菌に有効な抗菌剤を2-3週間投与します。深在性膿皮症を認める場合には抗生剤を4-8週間程度投与することもあります。繰り返す場合に抗生剤の治療のみを行うと耐性菌が生じるリスクがあるため薬剤感受性試験を実施することもあります。
外用療法としてシャンプーを併用していきます。シャンプーは殺菌または静菌成分の配合されたシャンプーを用います。ぬるま湯で前洗いした後シャンプーを行い、5-10分放置後タオルドライを行ってください。基本的には週に1-2回シャンプーをしていただきます。自宅でのシャンプーをすることが難しい方は病院でのシャンプーも検討していきましょう。
また、膿皮症の中には表面性膿皮症と呼ばれる境界明瞭な局所病変が形成されることもあり、その場合には外用療法のみで治療を行っていきます。
膿皮症は日和見感染の1つといわれ、常に基礎疾患の可能性を考える必要があります。
若齢個体ではアレルギー、高齢個体では内分泌疾患が多いとされています。その場合、膿皮症の治療と一緒に治療を行う必要があります。
膿皮症は細菌感染が起こってしまう皮膚の環境の問題が背景にあることが多いです。皮膚の改善が悪い場合には全身検査が必要になることもあります。
ただ繰り返し抗菌剤を使用することは耐性菌を生み出してしまうため改善しない場合や繰り返す場合はしっかり検査を行っていきましょう。
膿皮症はしっかり治療すれば直すことが可能です。ただし治療が数週間に及ぶこと、自宅での投薬、シャンプーなどオーナーさんの協力が必要となる疾患です。