犬の外耳炎の要因には、外耳炎を生じる原因となる主因と、続発して生じる副因、悪化させる増悪因、外耳炎の発症リスクを高める素因があります。
主因 | 副因 | 増悪因 | 素因 |
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感染症 | 細菌 | 耳道の変化 | 耳の形態的問題 |
アレルギー | 真菌 | 耳道上皮の変化 | 湿性環境 |
角化異常症 | 点耳薬や洗浄の悪影響 | 分泌腺の変化 | 閉塞性病病変 |
分泌腺の異常 | - | 鼓膜の変化 | 原発性中耳炎 |
異物 | - | 耳道周囲の線繊維 結合組織の変化 | 全身性疾患 |
内分泌失調 | - | 中耳の変化 | 他の治療の影響 |
免疫介在性疾患 | - | - | - |
その他 | - | - | - |
主因と素因は外耳炎に対して長期的な完治が必要なのかを決定するための重要な因子となります。感染症や異物は完治可能ですがその他は完治困難、もしくは生涯治療が必要となってきます。
副因とは外耳炎が起こった結果として二次的に付随する因子です。こちらは主因が良好にコントロールされればしっかり管理することができます。
増悪因とは外耳炎発生後に起こる耳の構造上変化で、これにより外耳炎の徴候をより重症化させます。主因と素因は外耳炎に対して長期的な完治が必要なのかを決定するための重要な因子となります。感染症や異物は完治可能ですがその他は完治困難、もしくは生涯治療が必要となってきます。
外耳炎の診断は視診にて耳介の評価を行い、耳鏡を用いて炎症の程度や範囲、耳垢の程度、耳毛の量や耳道の細さを確認して行っていきます。
耳垢を認める場合には採取してミミダニやマラセチア、炎症細胞などの確認を行っていきます。
皮膚と関連していることも多いので同時に皮膚全体の観察も行いアトピー性皮膚炎や脂漏症、内分泌疾患などを疑う症状がないかも確認します。
耳ダニがいれば駆虫薬、アレルギー性皮膚炎があれば原因追求と治療、甲状腺機能低下症があればホルモン剤といったように主因に対して治療を行います。
副因であるマラセチアや細菌に対して用います。また耳道の炎症軽減を目的に使用することもあります。副因に対しての治療は外耳炎のコントロールに必須ですが点耳薬のほとんどにステロイド・抗菌薬・抗真菌薬が含まれています。抗菌薬の繰り返しの使用で耐性菌を生み出してしまうので、ただなんとなく使い続けるのは避けましょう。
耳垢は新陳代謝の結果としてすべての犬に生じていますが、健常犬では皮膚のターンオーバーによって耳道の奥から手前に移動し自然に排泄されます。しかし、外耳炎の子では炎症によって新陳代謝が亢進し、また自浄作用が機能しなくなることによって耳垢の貯留が起きます。また耳毛によって耳道をふさいだりしている場合は外耳炎の素因となっている可能性もあるため洗浄とともに耳毛を除去します。
また素因となる形態的問題を除去することは困難なため、症状が発生しやすい子は定期的な検診、季節によって発生しやすい子は発生しやすい時期の予防的治療等を検討していきます。
外耳炎の原因はさまざまであり、それぞれの原因に応じた治療を行っていく必要があります。原因によっては治療を継続する必要もありますが適切な処置により良好に維持できる子も多いです。場合によっては自宅での耳掃除などが原因となったりすることがあるので耳を気にする様子を見かけたらまず一度動物病院を受診してみてください。